■真鍮 カーバイトランプ
私のカーバイトランプの思い出というと、小さい頃に連れて行ってもらった夜釣りです。
その頃から「水と変な石」だけで灯りとなる不思議な道具の存在と、独特のアセチレンガスのにおいは印象に残っていました。
当時使っていたあの大きなカーバイトランプを、キャンプツーリングに持って行こうとはさすがに思いませんでしたが、この真鍮製カーバイトランプは実物を見た瞬間に虜になってしまったのです。
ガスやガソリンランタンのように移動中にマントルやホヤが割れる心配もありませんし、コンパクトでありながら豊かな光量がキャンプツーリングにはぴったり!
いろいろ調べてみると、これらの真鍮製カーバイトランプは大正から昭和にかけて炭坑用として使われていたようで、復刻版を除き、どれも相当昔に製造された道具達ということになります。
一時期、オリジナルより大きな復刻版が新品で売られていましたが、なんと3万円以上もしました。
今は便利な時代でネット上を探すとなんとかオリジナルを入手することができます。
たいていの出物は表面が腐食し、きれいな状態ではありませんが、真鍮製ということで磨けばピカピカに復活して、まだまだ使える物があります。
私の手元にやってきたカーバイトランプ達も、かなり薄汚れていましたが、早速バラしてレストアしました。
レストアの様子です。
錆落としに使う薬剤は、アトムのさび落とし「おち太郎」と定番のピカールです。
歯ブラシや真鍮ワイヤブラシ、#600〜#1000程度の耐水ペーパーもあると便利です。
錆取り剤やピカールでゴシゴシ・・・
見違えるような輝きを取り戻します。
レストアが終われば早速試運転。
まるで生き物のような炎が私の心を鷲掴み。
部屋を暗くして、毎晩のようにニヤニヤしながら試運転をしている私を見て、いつものことながら家族はあきれ顔です(笑)
実際の光量は、ロウソクランタンより遙かに明るく、ソロなら全く問題ありません。
ある程度高さのあるところに吊せば、小さな宴会にも必要十分です。
古い道具なので、水タンクの蓋が無い物やリフレクターが欠品している物が多いカーバイトランプですが、私のも水タンクの蓋が無い物や、リフレクターが腐食している物がありました。
タンクの蓋やリフレクターについては無くても特に困る事はないのですが、これで夜道をちょっと移動するなんてときに手前側が眩しくて歩きにくいということを先日体験しました。
ガレージのがらくた箱をゴソゴソすると、昔購入したランタンにおまけで付いていたリフレクターを発見!
ドリルでセンターに穴をあけ、装着してみるとジャストサイズでした。
点火テストしてみると、明るさ自体は変わりませんが、集光されて光に指向性が生まれ、懐中電灯のような感じになり、だいぶ使い勝手がよくなりました。
それではカーバイトランプの構造と使い方を見てみましょう。
上部が水タンクとなっており、上の給水口から給水します。
真鍮製のカーバイトランプ自体が古い物なので、この給水口の蓋は欠品している個体が多いのですが、あってもなくてもランプとしての機能にはさほど影響しません。
逆に水タンクへの通気を確保してあげないと、後述する水滴が落ちなくなってしまい使用できなくなります。
下部がカーバイトタンクとなっており、ここにカーバイトを入れます。
通常売られているカーバイトはこのタンクには少々大きいので、私は使用する前に割っておきます。
カーバイトは堅くて簡単には割れないため、ウエスにくるんでハンマーで割っていますが、割る場合は自己責任でくれぐれも怪我に御注意ください。
水タンクとカーバイトタンクの間は、ガス漏れを防ぐためリングを回して閉め込んだ状態で密閉されている必要がありますが、水タンク側にあるオリジナルのパッキンはまず間違いなく劣化しています。
火だるまにならないよう、コーキング剤あるいはゴム製のパッキン等と交換しておいた方が安全です。
最上部のつまみは先端がニードルとなっており、これをゆるめることによって水タンクからカーバイトタンクへ水滴が落ちるようになっています。
実際に使用する前にニードルをゆるめると水滴がちゃんと落ちるかどうか確認しておきます。
水の量は、おおよそ2〜3秒に1滴ぐらいの感じで調整しながら使用しています。
うまくカーバイトタンク内に水滴が落ちると、カーバイトタンク内でカーバイトと水が反応しアセチレンガスが発生します。
アセチレンガスがカーバイトタンク内に充満すると、今度は火口からガスが吹き出します。
ガスは無色ですが、独特な(不純物である)硫黄のにおいがするので、すぐに分かるはずです。
そこへ着火してやればオッケーです。
はじめの頃は消えてしまったり、完全燃焼に近い状態で青い炎が出る場合があったり、炎が小さい場合があったりしますが、しばらく様子を観察してあげましょう。
30秒〜1分程度経ってもガスが吹き出してこない場合は、火口が煤で詰まっていると思われます。
そのままだと危険な場合がありますので、すぐに水を止めて、換気のいいところで分解・清掃してガスの経路を確保してやります。
その際ドリフのようになりたくなければ火気厳禁です。
まれに火口清掃用のニードルが付いている(残っている)個体があるかもしれませんが、それはすごくラッキーな個体です。
■榮製機 復刻版カーバイトランプ
ブスの復刻版なんかを造っていた榮製機からカーバイトランプの復刻版が発売されていました。
2008年頃に生産中止になった模様です。
パッケージ内容は本体、火口のスペア、火口をはずすためのレンチ、カーバイト一欠片、給水用の容器と至れり尽くせりな感じです。
ただ、全体的に細かいところの作りはいかにも復刻版らしく、良く言えば合理的、悪く言えば味気ないものです。
一応確認してみましたが、火口掃除用のワイヤーも再現されていました。
オリジナルと復刻版の最大の違いはその大きさです。
カーバイトタンクと水タンクの長さが長く、ふたまわりほど復刻版の方が大きいです。
運良くデットストックのカーバイトランプを見つけまして、新品をゲットすることができたのですが、その際、当時のペーパーが付属しておりました。
←画像をクリックすると拡大表示されます。
みつびし アセチリン燈二〇四号分解図と書いてあり、パーツリストと取扱説明書を兼ねています。
当時はパーツごとに購入できたんですね。
火口が広がりすぎた時は金槌で叩いてつぶせばいいのか〜
なるほど!
ランニングコスト
ガスの吹き出し量により燃費に差が出ますが、私の場合割ったカーバイト1欠片(60〜80g)で2時間ぐらいは燃えています。
カーバイト1kgで1000円ちょっとですので、ソロ用のガスランタンよりは低コストだと思います。
また、バイクで移動中にホヤが割れたり、マントル破れて焼き直しなーんて手間がかからず、マントル代も節約できます。
ただし、昔ほどの需要がないため、カーバイト自体を扱っているお店が少ないという欠点もあります。
一般的な入手先は釣具屋になると思いますが、旅に使う場合は現地調達ではなく、あらかじめある程度の量を準備しておいた方が安心です。
使用上の注意
不完全燃焼の代償として明るさを得ていますので多少煤が飛びます。
また、使用中は常に火種がある状態なので、白ガス等のストーブを使用する際は引火に注意が必要となります。
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